研究概要 |
本研究は、衝撃的地震力をうける鉄筋コンクリート(以下RCと略記)部材に生じるせん断破壊現象を本質的に明らかにして、危険な脆性破壊を避ける合理的な耐震設計法を確立するため、以下の実験的・理論的研究を行った。 (1) 衝撃せん断破壊実験: 片持梁試験体の自由端に、高圧空気によって加速した落錘を当てる衝撃曲げせん断破壊実験を行った。また、比較試験体にたいして、油圧ジャッキによる静的曲げせん断破壊実験を行った。試験体の種類マトリックスは、無筋および単筋試験体、シャースパン比(1.5,2.5,3.5)、設定ひび割れ位置2種である。せん断ひび割れの進展状況、導入衝撃力、梁自由端と梁重心位置加速度、梁自由端たわみ、設定ひび割れの開口変位とずれ変位、主鉄筋およびコンクリートの動的ひずみ分布を測定した。その結果、衝撃力作用後1-2msec以内では、主としてせん断変形が部材軸方向に優先的に生じて、これによって破壊機構が決定するという、RC部材のせん断破壊に関して従来予測されていなかった全く新しい知見が得られた。 本研究は、現在、米国ノースウエスタン大学Prof.S.P.Shahと国際共同研究を行っている。 (2) 破壊力学的基礎理論:RC部材のせん断ひび割れ先端におけるひび割れ進展条件として、主筋の効果を考慮した混合モード応力拡大係数に関係づけたせん断破壊理論を作成した。現在、米国ラトガース大学Prof.M.Dendaと共に、衝撃力の効果を考慮した応力拡大係数K_I.K_<II>の数値解析的評価に関する国際共同研究を行っている。 (3) 高速加力を受けるRC部材のせん断破壊の確率過程理論:固体の破壊に関する確率過程理論をRC部材の曲げせん断破壊に適用している。外部から作用する衝撃的せん断力と部材の破壊域コンクリートの速度過程理論と関係づけて、RC部材のせん断破壊に関する確率過程理論を得ている。その結果、加力速度のせん断破壊強度に対する影響が理論的に評価された。
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