研究概要 |
本研究では,ヒートアイランドに大きな影響を与えている建築的な要因の中で,建物表面積が及ぼす影響と建築壁体の潜熱放散機構の二つをとりあげ,これらについて重点的に研究を行う.それぞれについて,本年度の研究実績の概要は以下のとおりである. (1)建物表面積が及ぼす影響については,まず,東京都より借用した「東京都都市計画地図情報システム」のデータを用いて,建物表面積や容積率等の建築に関連した街区指標の抽出を行った.それに基づき街区指標を変化させた理想街区モデルを設定し,数値計算によるケーススタディを行い,街区のゲプハルトの放射吸収係数,天空日射吸収率,直達日射吸収率を算出し,街区指標との関連を検討した.今回は,計算簡略化のため様々な仮定をしており,より多くのケーススタディを行い,街区指標から直接放射特性を予測する式を作成することが次年度以降の作業として残された.また,都市の伝熱シミュレーションには建物の外壁についてのデータが必要であるが,東京都都市計画地図情報システムデータにはこれらは含まれていない.そこで,丸の内(大規模オフィス地域),神田(一般オフィス地域),葛西(集合住宅地域),等々力(戸建て住宅地域)の4つの地域を選びそのうち500m × 500m の範囲を調査対象として,外壁の,窓面積率,色,凹凸,ガラス種類の4つの項目に関して実態調査を行った. (2)建築壁体の潜熱放散機構については,屋根外装材としてモルタル,保水性建材,芝生埴栽面,シングル材,外壁外装材としてモルタルの5つ外装材サンプル板を作成し,東京大学工学部1号館屋上に設置し,10月16日より約一か月にわたって断面温度分布や水分蒸発量の測定を行った.物性値を測定し,その物性値から水分蒸発量を予測する方法の開発が,次年度以降の課題となっている.
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