研究概要 |
本研究では,ヒートアイランドに大きな影響を与えている建築的な要因の中で,建物表面積が及ぼす影響と建築壁体の潜熱放散機構の二つをとりあげ,これらについて重点的に研究を行う.それぞれについて,本年度の研究実績の概要は以下のとおりである. (1) 建物表面積が及ぼす影響については,昨年度に引き続き,東京都より借用した「東京都都市計画地図情報システム」のデータを用いて,建物表面積や容積率等の建築に関連した街区指標と,街区のゲプハルトの放射吸収係数,天空日射吸収率,直達日射吸収率を算出し,街区指標との関連を検討した.街区指標としては,建蔽率,建物高さ(容積率),街路幅比,建物棟数を考えた.更に,直達日射吸収率の値は,太陽高度・太陽方位角によって異なるため,これらも検討対象とした.昨年度までは建物の高さが一様な街区モデルしか検討していなかったが実街区では高さにばらつきがあるため,新たに要因として建物高さの標準偏差を加えたケーススタディも事前に行ったが,影響は小さかった.次ぎに実験計画法に基づき多数のケーススタディを行い,放射伝熱特性値を目的変量,街区指標を説明変量として重回帰分析を行い,予測式を作成した.また,実街区(丸の内)の計算を行い予測式と比較したが,精度はあまりよいとは言えなかった.実街区の対象領域が不足していたのが大きな原因と考えられるが,新たな街区指標が必要な可能性もあり,次年度の検討事項として残された. (2) 建築壁体の潜熱放散機構については,物性値を測定するための準備段階に留まった.
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