研究概要 |
従来,都市気候解析では建築物の影響はごく簡易な扱いがされているに過ぎないが,建築や街区の形態・材料と都市気候との関連が明らかになれば,建築計画や都市計画に生かすことが可能となる.本研究は,建築物の影響を都市気候予測モデルに取り入れることを目標とし,特に都市表面における放射伝熱機構を中心に研究を行った.本研究で得られた成果は以下の通りである.1.東京都のGISデータを用いて,建蔽率,建物高さ(容積率),街路幅比,建物棟数といった街区指標の抽出を行い,数値計算により,街区のゲプハルトの放射吸収係数,天空日射吸収率,直達日射吸収率といった放射伝熱特性値と街区指標の関連について検討した.実街区では高さにばらつきがあるため.建物高さの標準偏差を加えたケーススタディも事前に行ったが,影響は小さかった.実験計画法に基づき多数のケーススタディを行った結果を基に重回帰分析を行い,放射伝熱特性値の予測式を作成した.2.建物の外壁についてのデータが必要であるが不足しているため,丸の内,神田,葛西,等々力の4つの地域の500m×500mの範囲を調査対象として,外壁の窓面積率,色,凹凸,ガラス種類の4つの項目に関して実態調査を行った.次に建物用途・方位との関係について分析を行い,例えば壁当たりの窓面積率は事務所系で方位によらず平均値40%程度の正規分布となることなどが明らかとなった.3.3地域(丸の内,神田,葛西)の500m×500mの実街区を対象に,西岡・松尾のモデルを改良した都市気候モデルを適用して計算を行った.夏の典型的な1日を想定して計算したところ都市キャノピーの最高気温で最も高い丸の内と最も低い葛西で約1.6度の差が生じるという結果が得られた.
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