本研究の目的は住宅地における道路騒音の地域計画的対策指針を提示することである。具体的には、道路周辺部に緩衝建築物を配置することによる背後地の騒音低減効果を明らかにし、どのような建築物を設置すれば背後では道路騒音の低減効果がどの程度見込めるかを提示すること、並びに道路からの騒音の影響を最小限にするための住宅や公園などの配置手法を明らかにすることである。研究の進め方としては、(1)音響模型実験を実施して、道路沿道部に建築物を配置した場合の背後地における道路騒音の減衰効果を求め、実験結果から、緩衝建築物の形状・配置と騒音低減効果の関係を導く。次に、(2)同じく音響模型実験により、公園・緑地などのオープンスペースや戸建て住宅の配置方法による騒音伝搬性状の差について検討し、騒音の低減という視点からはどのような配置が望ましいかを提示する。さらに、(3)実際の住宅地において道路からの騒音レベルを実測調査し、模型実験で得られた実験結果の妥当性を検証する。最後に、(4)本研究で得られた結果を総括して、住宅地の地域計画的騒音防止対策指針として提示する。このような研究を3ヶ年で実施する計画である。 初年度(平成9年度)は音響模型実験システムの構築を行った。すなわち、研究全体を通しての模型実験計画を策定した後、九州大学工学部建築学科の環境実験室内に簡易半無響室を仮設し、そこに住宅地の1/30縮尺模型を設置した。模型用音源として、道路騒音を模擬するための音源走行装置を製作した。また受音点における音響信号を解析する装置を購入した。このような実験室及び実験装置の音響特性を詳細に検討して、実験システムが本研究目的にかなうことを確かめた。そして研究の第一段階の実験として、道路沿道に戸建て住宅がランダムに配置している場合の道路交通騒音のレベル減衰量を求める実験を行った。
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