本研究の目的は住宅地における道路騒音の地域計画的対策指針を提示することである。具体的には、道路周辺部における建築物等による騒音低減量を簡便に予測する手法を明らかにし、道路からの騒音のの影響をできるだけ小さくするための住宅や公園などの配置計画指針を提案することである。最も静けさを求められるのは住宅地であるとの考えから、本研究では、住宅地を対象として戸建て住宅群による道路交通騒音の減衰量を予測する手法と、それに基づく戸建て住宅の配置と住宅地内の騒音分布の関連について研究した。戸建て住宅群による道路交通騒音減衰量を理論的に求めるのは極めて難しいため、本研究では実験的に求めることとした。 昨年度までに、模型実験システムを構築し、それを用いて基礎的な実験を実施して、騒音減衰量の予測の基本方針を得たが、本年度は、昨年度までの研究成果を踏まえて模型の縮尺を変更し、精度の高い実験を行い、道路交通騒音が戸建て住宅地へ伝搬する際の住宅群によるレベル減衰量を簡便に予測する方法について検討した。その結果、受音点から道路を見通す角度、住宅の平面的密度、受音点から道路までの距離の3つのパラメータから騒音レベル減衰量を求める実験式を提案した。また、検証実験、実際の住宅地における騒音実測、既往の研究との比較検討から、提案した実験式の有効性を検証した。さらに、実験式を用いて具体的な住宅地の騒音レベル分布を計算し、住宅の配置の違いによる騒音レベル分布の違いを検討した。 ここで提案した実験式は、これまで難しかった住宅地内の特定点の騒音レベルを求めることができ、環境騒音の推計手法としても有効な方法であると考える。また、実験式で用いている3つのパラメータは、いずれも住宅地の基本計画段階で入手可能なデータであるので、住宅地の基本計画において、道路交通騒音を配慮した住宅配置計画にも応用できると考える。
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