研究概要 |
強磁性体は、そのサイズがnm付近に近づくと熱擾乱(超常磁性)が起こり、強磁性体材料としての機能を失う。本研究では、強磁性体微粒子の合成法を開発し、高分解能磁区観察法に応用するためにスパッター法によるnmサイズの微粒子合成法、合金化による高磁気エネルギー化、表面磁気異方性の解明と高磁気エネルギー化を研究した。まず、Co微粒子についてそのサイズと結晶形態について、数10nm以下ではfcc相が安定になり、より大きいサイズではhcp相が安定相であることを見出し、数10nm以下でも準安定相としてhcp相が得られること、さらにこれらの形成機構は、各微粒子結晶形態の表面エネルギーで説明できることを示した。これに基づき、結晶磁気異方性が高く、またhcp相の形成温度範囲が広いCo-(Pt,Cr)合金微粒子を合成し、高い抗磁力が得られることを見出した。次に、表面磁気異方性の効果を調べるために、Fe微粒子の表面酸化状態を制御し、酸化状態に応じて抗磁力が大きく変化し、理論的な考察から、表面磁気異方性の寄与が大きいことを実証した。これに基づき、Fe-(Al,Si)-Oのスパッター薄膜を作成し、微粒子サイズと抗磁力の関係から表面磁気異方性の寄与を定量的に求めた。 以上の結果は、本研究の目的である「表面磁気異方性の制御による超常磁性の克服」の基礎的な検証である。上記実験と同時に、微粒子磁化過程への表面磁気異方性の効果を計算機シミュレーションにより定量的に把握する準備をすすめた。また、表面酸化、窒化状態を制御するため、超高真空超微粒子作成装置による微粒子合成の実験をすすめている。より強い表面磁気異方性が期待できる希土類-遷移金属についても合成実験を行ったが、現行装置では表面酸化状態の制御が難しく、超高真空超微粒子作成装置による微粒子合成技術の確立を待って実験をすすめることにした。
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