研究概要 |
3d遷移金属-メタロイド原子系金属間化合物は,結合の性質が金属結合性にイオン性,共有性が加味され,結晶化学,磁性や電気伝導の振る舞いにおいて興味深い物質群であり機能材料の宝庫ともいわれる.本研究では,遷移金属-メタロイド原子系化合物の超高圧・高温反応,超高圧力下における空格子サイトへの原子挿入による新規充填構造物質の合成,の2つの視点に立ち,超高圧力下を反応場とした新規遷移金属化合物の探索研究を行い,新しい機能性無機材料の設計に資することを目的とした. 1.遷移金属二アンチモン化物(TSb_2)は常圧下においてマーカサイト型構造を有しており,その結合は多分にイオン性を含み形式電荷はT^<4+>[Sb_2]^<4->で表される.超高圧力下での合成を行った結果,CrSb_2においては6GPa以上の圧力領域においてCuAl_2型構造の新規高圧相を得た.マーカサイト型常圧相における局在的な3d電子の性質は,圧力誘起相転移により遍歴性を帯び,遍歴電子による強磁性をしめすようになることを明らかにした.さらに,NiSb_2においてはNiSb_6八面体が稜共有と頂点共有で連結した新しい高圧相を合成し,これらの結果から高圧下における遷移金属プニクタイド,カルコゲナイドの高圧力下の高圧相転移を系統化した. 2.体心位置に大きな空洞を有するCoSb_3の結晶格子に,超高圧力下における原子挿入を行い,一連のM_xCo_4Sb_<12>化合物を新たに合成した.特にM=Ge,Sn,Pbを挿入した実験結果から,挿入原子と骨格構造との"結合の強さ"には,挿入原子のサイズ効果が影響することを明らかにした.挿入原子は空洞内で大きな熱振動を示し,その結果として格子熱伝導率の大幅な低減が起こることが判明した.この結果は,新規熱電変換材料の開発研究に重要な指針を与えるものである.
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