研究概要 |
ガラス中の3価の希土類イオンの吸収・発光に関して、以下の知見及び成果を得た。 (1)種々の配位構造における希土類イオンの4f電子の波動関数の動径成分の算出が可能となった。 (2)分子動力学法シミュレーションによるガラス構造モデルから求められる結晶場パラメータと(1)で得られた4f電子の波動関数の動径成分を用いて、ガラス中における希土類イオンの吸収・発光スペクトルとその振動子強度・散乱断面積の算出が可能となった。 上記の2項目のA1F_3系のフッ化物ガラス中のEu^<3+>の発光スペクトルと比較し、定量的再現が可能であることがわかった。従来定性的にしか、比較されて来なかったガラス中の希土類イオンの発光・吸収に関与する4f電子のエネルギー準位及びその準位間の遷移確率が定量的に算出可能であることを初めて示すことができた。さらに、この成果を起点として、以下に挙げる2項目に対する試行を行った。 (1)Eu^<3+>以外の希土類イオンのA1F_3系のフッ化物ガラス中における吸収・発光スペクトルの検討。 (2)発光スペクトルからのEu^<3+>の配位構造の解析。 (1)においては、Nd^<3+>,Pr^<3+>,Er^<3+>,Tm^<3+>の4種の希土類イオンの吸収スペクトルにおいて、実測を十分に再現できることが示せた。(2)においては、Eu^<3+>の多数ある準位の中で、主に第1近接によりStark分裂を起こす準位を特定し、そのスペクトル形状から本ガラス系では、主にEuF_8の配位数であることがわかった。
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