研究概要 |
天然に多産するカオリン鉱物を1000°C付近で熱処理すると,その粒子内部に非晶質シリカをマトリックスとし数nmの超微粒子のγアルミナが規則的に分散した微細組織が形成される.我々は,これからアルカリやフッ酸などのエッチング液を用いて非晶質シリカを選択溶解すると,大きさのそろった細孔をその形骸粒子内部に形成させた多孔質粉体が調製できることを見いだした.この多孔体は数nmの細孔径を有していることから相対湿度が高くなると毛細管凝縮により著しい水蒸気吸着量の増加が見込まれ,相対湿度変化に応じて自己診断的に吸脱着のスイッチングを起こすインテリジェントな機能をもつ調湿材料への応用が期待できる.そこで,出発試料,加熱処理温度,選択溶解処理の温度,時間,アルカリの種類,濃度などについて検討し,それぞれの調製条件のもとで得られる多孔体の比表面積と細孔径分布について調べた.その結果,出発試料に米国ジョージア産のカオリナイト,加熱処理温度を1000°C,選択溶解処理温度を90°C,処理時間を1時間,KOH濃度を4mol/lで処理すると細孔径分布がシャープで約6nmの大きさの均一なメソ細孔をもつ多孔体が作製できた.この多孔体の室温における水蒸気の吸着・脱着等温線を調べたところ,吸着側では相対湿度か70%付近から急峻に吸着量が増加し,最大で約600ml(STP)/gの吸着量を示し,一方,脱着側では65%付近から急に脱着する特長を示し,期待通りの調湿機能を有することが分かった.この他,分子サイズや極性の異なるメタノール,エタノール,イソブタノールおよびシクロヘキサンの吸脱着等温線を測定した結果,この多孔体の表面性状は親水性が強く,疎水表面性の活性炭やシリカと比べて水蒸気吸脱着の繰り返しにともなうヒステリシスが小さく,安定した調湿性能が発揮できる材料であることが明らかとなった.
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