研究概要 |
(研究の目的) 本研究の目的はバルクおよび薄膜における化学的誘起粒界の形成プロセスを詳細に観察し、形成機構および粒界の常に変化する粒界移動のプロセスを解明することにある。特にバルクにおける液相と粒との接触界面で起こっている化学的現象ならびに簿膜におけるコラムナ-界面を粒界と考えて,その形成・修飾過程をその場観察するための新しい技法を導入し、粒界相形成と液相生成、粒界移動と粒成長と粒分布、さらに界面および界面相の形成機構とその動き、ダイナミクスを解明し、現在その必要性が高く望まれている界面や粒界制御、高次微構造制御に必要な基礎的現象を明らかにすることを目標としている。 (研究概要) バルクの粒界形成ダイナミクス観察用のモデル材料として酸化プラセオジウム添加酸化亜鉛を用いた.この系については焼成後の試料の微構造観察に関する既往の研究から粒界形成時に液相が関与することが推定されていたものである.平成9年度では,液相の生成をその場観察する手段の一つとして高温DTAを試作し,液相生成温度ならびに固相と共存する液相の組成を明らかにすることを行った.なお,9年度にはさらに実用の酸化亜鉛バリスタに近い酸化プラセオジウム-酸化プラセオジウム-酸化亜鉛系状態図もDTAを用いて作製した. その結果,酸化プラセオジウム-酸化亜鉛系においては化合物,固溶体ともに存在せず,当モル混合付近に共晶点を持ち,液相生成温度は1382°Cであることが明らかになった.さらに,Coを添加した系では液相生成温度はさらに1272°Cまで低下することが明らかになった.このように平成9年度では粒界形成のダイナミクスに関与する液相の生成温度や組成を明らかにすることができたため,現在粒と粒の界面に存在する液相が微構造形成におよぼす効果を検討しているところである. また,MOCVD法によりサファイア基板上に成膜した酸化亜鉛簿膜と,ビスマスを蒸着したサファイア基板上に成膜した酸化亜鉛薄膜の電流-電圧特性を比べたところ,前者は直線的な関係であったのに対し,後者はバリスタ的な特性を示した.このことは,成膜中に酸化亜鉛薄膜のコラムナ-界面にビスマスが拡散したことにより粒界が修飾されてバリスタ特性が発現したものと予想される.
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