研究概要 |
ガラスの破壊における非脆性挙動について,ホウ酸塩ガラスのクラック進展挙動に関するインデンテーションフラクチャー法による研究と,ケイ酸塩ガラスの押し込み変形とそれに伴う破壊における塑性変形と高密度化の寄与の分離の研究を行った.その結果,以下の知見が得られた. インデンテーション誘起クラックのようにクラックの進展と共にクラック先端にかかる応力が低下する場合,応力腐食物質存在下では,ケイ酸塩ガラスの場合には応力が高いほどクラック進展速度が速くなるのとは異なり,ある応力以下では,応力に依存せずに一定の速度でクラック進展が生じることを見出した.この挙動は,クラック先端におけるガラスの溶解速度がクラック側面での速度より速いことで生じると考えられ,ある応力において,応力促進溶解挙動と通常の応力腐食現象のクロスオーバーが生じるとすることで説明できた.ケイ酸塩ガラスとホウ酸塩ガラスの挙動の違いは,水などの応力腐食環境中へのガラスの溶解速度の圧力依存性が異なるためと考えられた. シリカガラスとソーダ石灰ガラスにヌープ圧子で圧痕をつけてその大きさを測定し,続いて熱処理をした後,圧痕の大きさの減少を測定した.シリカガラスでは,熱処理温度がガラス転移温度の60%程度までの場合は熱処理による圧痕の長さ減少は10%以下であるのに対し,それ以上の熱処理温度の場合は10-25%の長さ減少が観測された.これに対しソーダ石灰ガラスの場合は,熱処理温度とガラス転移温度の比が同一のシリカガラスと比べ,圧痕の長さ減少は半分以下であった.したがって,シリカガラスにおける押し込み変形では高密度化の影響が大きいのに対し,ソーダ石灰ガラスの場合には塑性変形の影響が大きいことが明らかになった.
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