研究概要 |
炭化ホウ素(B4C)などのホウ素リッチなホウ化物は、高温安定性が優れ、1000K以上の温度域でも性能指数(Z)がさらに増加することから、有望な高温熱電材料である。しかし、B_4Cを熱電発電材料として実用化するためには、そのZをさらに大きくすることが必要である。B_4Cのゼーベック係数(α)は構造欠陥に大きく依存することから、B_4C中に第二相を微細に分散させ、積層欠陥や粒界などを導入することにより、複合材料のαが増大することが期待される。また、電気伝導度(σ)の高い第二相を分散さて、複合材料のσを大きくすることにより、性能指数を向上させることが可能になる。B_4C中に分散する第二相としては、B_4Cとの両立性が優れ、熱電性能も優れた高温材料である必要があるが、本年度は、このような候補材料として、Y-B系のホウ化物を選んだ。B_4C、YB_6およびB粉体を原料として、B_4C-YB_n(n=6,66等)系複合材料を作製した。また、B-C-Y系の高濃度B組成域での相状態図を作成した。B_4C-YB_6二相域は擬二元共晶系であり、共晶組成が約60mol%B_4Cであった。B_4C-YB_6共晶系の試料では、YB_6量の増加とともに易動度、キャリヤー濃度、σ、κは増大し、αとZTは低下したが、B_4Cに近い組成の試料のαとZTは、B4Cの値よりも大きかった。本研究で得られた最大のZTは1100Kで0.54であった。B_4C-YB_<66>包晶系の試料では、αは500〜800Kで極大を示し、σ、κとZTはYB_<66>量の増加とともに低下した。本研究によって見出されたB-C-Y系複合材料は、これまで報告されているホウ化物系熱電材料の中で最高レベルの熱電性能を有していた。
|