研究概要 |
超急冷金属薄帯を異なる組成の合金で2層化することにより新奇な特性が発現することが期待される.今年度は,(1)FeSiBNb/FeSiBNbCu,(2)FeSiB/CoFeMoSiB2種類の2層薄帯を作製し,その特性を個々の単層材と比較した.作製法は,中を仕切った石英製のるつぼを使った.仕切られたそれぞれのるつぼ室の底にはスリット伏のノズルが設けてある.2種類の合金を別々のるつぼ室に装填して高周波溶解して単ロール上に噴出した.得られた薄帯は表面・裏面とも非晶質であることがX線回折で確かめられた. (1)の2層薄帯を520°C以上アニールするとFeSiBNbの層は非晶質のままであるがFeSiBNbCuの層は結晶化した.電子顕微鏡観察の結果FeSiBNbCuの層は結晶粒10nmの微細結晶組織をしていた.この非晶質/ナノ結晶材の磁気特性は,個々の単層材を単に重ねたものとは大きく異なる挙動を示した.これはナノクリスタル化によって誘導された内部応力によるものである.(2)の2層薄帯は正磁歪のFeSiBとゼロ磁歪のCoFeMoSiBの組み合わせである.この2層材のアニール後の特性は,(1)と同様に個々の単層材の重ね合わせとは異なっている.アニール中に発生した内部応力がその原因と考えられる.
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