研究概要 |
Nbは融点が2470℃と高く,密度は8.5g/cm^3と他の高融点金属(W:19.3g/cm^3,Re:21.0g/cm^3)に比べて小さいため,耐熱材料の高強度化にとって有望な合金元素である.特に,Nbを過飽和に含むNi-Nb合金では金属間化合物相Ni_3Nb(δ相)が生成するが.この化合物相は対称性の悪いD0a型構造を有する.本研究ではこのδ相を利用して優れた耐熱合金の設計をすることを目的に、初年度は、Ni-Nb-M(M:Fe,Co,Al,Ti,V)3元系の状態図を作成し、また,次年度はその結果に基づいてγ-Ni相中に生成るδ相の形態について検討した.本年度は,δ相の構造を原子レベルで構造解析し,また,δ+γ2相合金用いて母相との格子ミスフィットを電子顕微鏡で調べ,以下のことを見出した:(1)化学量論組成のN_3Nb-δ相の構造ではNi原子が非対称に配列し,これは第2近接異種原子から強い相互作用を受けるためである.したがって,非対称性を緩和するためには,その相互作用を低減させるFe,Ni,Vなどの元素の固溶が有効であることを,実験及び計算結果から明らかにした.また,高温におけるδ相の構造をin-situで調べ,高温ほど非対称性は緩和される.(2)γ-Ni母相中に析出するβ相はFeの添加により著しく微細化される.これはγ/δ界面においてδ相優先成長方位であるa軸に沿ったミスフィット転位の導入頻度が増大し,δ相の成長が抑制されるためである.また,Vの添加により析出形態は微細化し,これはγ/δ界面での格子ミスフィットは緩和されるためである.以上の結果から,Ni_3Nb-δ相を利用した超合金の設計指針を示した.
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