本研究は、高比強度高温構造材料として注目されているTiAl金属間化合物の実用化を実現するための二相ラメラ組織の配向を制御する技術を確立することを目的としている。本年は昨年見出したこの系の状態図の特徴に注目し、先鋭な集合組織を有するチタニウム箔とアルミニウム箔の積層材の拡散反応によってチタニウム中のアルミニウム濃度を富化し、最終的にチタニウムの集合組織を反映したα単相状態を実現した後に二相化するプロセスについて、プロセスを構成する種々の段階の物理的内容を明確にすることを目的として研究を進めた。 予備接合後のアルミニウムの溶解を防ぐためのアルミニウムの化合物化処理ではチタニウムの集合組織は変化しないが、チタニウム基合金相のα→β変態を抑制するために設けられていた熱処理は従来の条件では不十分でβ化によるチタニウムの集合組織変化が相当量生じており、加熱時間を長くする必要があることが分かった。α単相化処理の時間を適切にすると、所望の方位の頻度が正常粒成長によって増大することが判明した。さらにアルミニウムの集合組織の活用の可能性について、アルミニウム相を起点とする様々な化合物相の結晶方位をEBSP法によって評価した結果、ラメラ組織の配向制御にアルミニウム相の集合組織も利用できることが見出された。以上により、配向の制御度を向上させるためのプロセス改善についていくつかの可能性が見出された。
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