研究概要 |
高容量の水素吸蔵合金を効率よく開発するためには、新しい視点からのアポローチが必要である。本研究では、水素吸蔵合金の電子状態を分子軌道法から初めて計算し、その特性を評価するとともに、高容量の新合金(例:マグネシウム系合金)の設計のための足掛かりを得ることを目的とした。 DV-Xα分子軌道計算を行い、以下の結果を得た。 1. 水素吸蔵合金は、水素化物形成元素(A)と非形成元素(B)から成っている。金属-水素二元系において、水素化物形成元素の方が水素との親和力が大きいにもかかわらず、水素吸蔵合金中では水素は水素化物形成元素よりはむしろ非形成元素と結合している。水素はB原子の近くに存在し、B-H結合を形成するものの、それが強くないため放出が容易になると考えられる。 2. しかし、B-H結合を形成するためには、A原子がB,H原子の近くに存在していることが必要であることがわかった。この意味でA,B両元素がともに水素吸蔵合金に必須の構成元素であるといえる。 3. 水素吸蔵量はA原子の濃度が高いほどB-H結合の数が増えるため多くなる。しかしA原子の濃度が多すぎると不均化反応などが起こり、水素が安定になりすぎて、放出しなくなる。この限界のA原子濃度は、2Bo(A-B)/[Bo(A-A)+Bo(B-B)]の比で決まることがわかった。ただしBoはカッコ内の各原子間の結合の強さを表している。 4. Mg_2Ni系では、Bo(Mg-Ni)がBo(Mg-Mg)よりも大きいため、この比が大きくなり、A(この場合Mg)濃度が高くなる。
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