研究概要 |
これまで専ら試行錯誤によって開発かれてきた水素吸蔵合金の分野に、DV-Xa分子軌道法を初めで導入し、新しい視点からの合金設計を行い、以下の結果を得た。 1. 水素が侵入型格子位置に入り、格子が膨張するAB_5型合金(LaNi_5),AB_2型合金(ZrMn_2),AB型合金(TiFe)では、合金格子の骨組を作っている金属の原子間の結合の強さが重要である。すなわち、水素が入り膨張しやすいような金属原子間の結合をもつ合金ほど、その水素化物は安定になる。 2. 水素化にともなって結晶構造が元のものと全く違うものに変わるAB_2型合金(Mg_2Ni)や固溶体型合金(b.c.c.V)では、金属-水素原子間の結合が金属原子間の結合以上に重要になる。 3. さらに水素はこれら合金中では水素化物形成元素(A)よりも非形成元素(B)の近くに存在し、B-H原子間結合を形成している。この結合はそれほど強くないため、水素の放出が容易になる。 4. しかし、B-H結合を形成するためには、A原子がB,H原子の近くに存在していることが必要であることがわかった。この意味でA,B両元素がともに水素吸蔵合金に必須の構成元素であるといえる。 5. 水素吸蔵量はA原子の濃度が高いはどB-H結合の数が増えるため多くなる。しかしA原子の濃度が多すぎると不均化反応などが起こり、水素化物が安定になりすぎて、水素を放出しなくなる。この限界のA原子濃度は、2Bo(A-B)/[Bo(A-A)+Bo(B-B)]の比で決まることがわかった。ただしBoはカッコ内の各原子間の結合の強さを表している。 6. Ng_2Ni系では、Bo(Mg-Ni)がBo(Mg-Mg)よりも大きいため、この比が大きくなり、高容量となる。
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