研究概要 |
新しい軽量高温材料として注目されている2相TiAl合金は,通常の溶解凝固状態ではラメラ組織を呈するが,常温での延性に乏しく,この解決なしには実用化はありえない.このラメラ多結晶体の脆さは,個々のラメラ粒の力学物性の大きな異方性のためであり,本研究では,単一のラメラ結晶粒であるPST結晶から拡散接合に上りPST双結晶を作製し,粒界での歪の適合性に着目して変形挙動を調べた.PST双結晶を作製した方位の組み合わせは,PST結晶でのA_1あるいはB_1方位(荷重軸とラメラ組織境界のなす角度が0°および31°)同士のもので,1つの結晶粒について荷重軸の周りに角度0(0〜180°)だけ回転させた.双結晶における粒界での歪の適合性をPST結晶の巨視変形から考察すると,いずれの方位の組み合わせでも,θ=90°で最も悪い状況となる.B_1方位PST双結晶では,歪の適合性が良い場合,降伏応力,加工硬化率,引張伸びともにB_1方位PST結晶とよく似た値を示すが,θが90°に近く歪の適合性が悪い場合,降伏応力,加工硬化率は高く,引張伸びは大きく減少する.このように,2相TiAlラメラ合金の引張伸びは結晶粒界での歪の適合性と密接に関連している.これに対し,A_1方位PST双結晶では,粒界での歪の適合性の大小に関係なく,すべての双結晶で,降伏応力,加工硬化率,引張伸びともにA_1方位PST結晶とよく似た値を示す.これは,粒界での歪の不適合を付加的な変形を起こすことにより補償するのに,B_1方位双結晶の場合に比べて歪の不適合度が小さいこと,変形応力が元々高く付加的な変形を起こし易いことによる.この結果は,ラメラ方位が結晶成長軸に平行に揃った一方向凝固材が工業的に作製できれば,強度のみならず延性においても優れた特性をTiAl合金に付与することができることを示唆する重要な結果である.
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