研究概要 |
本研究では,タービンブレ-ドなどの高温での強度を必要とする製品を,適切な残留応力を有しかつ高い形状精度のセラミックスの多層構造として成形する技術を確立することを目的としている.平成9年度の研究では,まず(1)脱脂過程での材料の粘弾性特性及び脱脂特性を把握して脱脂時の変形評価の基礎を確立し,次に(2)大きな残留応カを有する2層及び3層構造のモデルを成形して脱脂,焼結過程における変形の概要を明らかにした.得られた結果を以下に要約する. (1)課題(1)の基礎実験の一つはグリーン材料の70〜100°Cにおけるクリープ試験で,この温度範囲では指数型粘度特性を示すこと,及び高温域での粘度は低く脱脂開始時点までに成型時の残留応力はほぼ消失することが示唆された.ただしバインダーはPSとワツクスの混合物である.また脱脂特性については,200°Cで脱脂は始まり400°Cでほぼ終了するが,ワックスの量が多くなると脱脂温度は少し低下することがわかった. (2)課題(2)については.まず同じ材料の2層を並列に配置して一方に引張り,他方に圧縮の残留応力を与えたモデルを脱脂した場合,残留応力のために大きなそりを生じることを示された.次に,焼結助剤の量の異なる材料による2層構造を脱脂,焼結した場合焼結において大きなそりが発生した.また焼結助剤の量の異なる3層構造のモデルの焼結において実際に大きな残留応力が生じることがわかった.これらの結果はグリーン体での残留応力及び焼結速度のむらが脱脂時,焼結時に変形を生じること,さらに,焼結助剤の量を適当に分布させることによって焼結製品に有効な残留応カを付与しうることを示唆するものである.
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