研究概要 |
Ni-Cr合金に対して,YやLaなどの希土類元素を添加もしくは酸化物として分散,あるいは表面に塗布すると,高温酸化時に生成するCr_2O_3スケールの密着性が向上することが知られている.本年度ははスケール/合金界面に生成すると考えられるLaCrO_3中のLa^<3+>イオンの拡散係数を求めた.その方法としてはLa_2O_3とCr_2O_3の単結晶を用いた固体間反応を利用した.拡散実験は温度は1483Kから1695Kとし,雰囲気は大気で行い,1697KではAr-1%O_2,Ar-1%H_2-0.6%H_2Oについても行った.また,Pt粉末を用いたマーカー実験も行った. 単結晶間に生成したLaCrO_3の厚さの2乗は時間と比例関係にあった.また,PtマーカーはLaCrO_3とLa_2O_3の界面に存在した.この結果から,LaCrO_3の生成はLa^<3+>イオンの拡散により律速されていることがわかった.La^<3+>の拡散はLa空孔を介して起こるのでLa空孔の生成反応を以下のように考えた. Cr_2O_3+3/2O_2【double arrow】2V^<′′′>_<La>+2Cr^×_<Cr>+6O^×_O+6h^・ (1) 以上の欠陥化学式をWagnerの理論に適用し、Peckらの報告したLaCrO_3の標準生成ギブスエネルギを用いてLa^<3+>の拡散係数(D_<La3+>)をCr_2O_3の活量の関数として以下のように求めた. D_<La3+>/m^2S^<-1>=2.3×10^<-1>exp(-(480kJmol^<-1>)/(RT_1))(Po_2/Pa)^<3/16>a^<1/5>_<Cr2O3> (2) この値は以前に求めたYCrO_3中のY^<3+>の拡散係数より大きいことがわかった.これはLaCrO_3中のLa^<3+>空孔濃度がYCrO_3中のY^<3+>のそれより多いことに起因すると考えられる. また,1695Kにおける低酸素分圧での実験結果から1×10^<-5>atm程度以下では上式の酸素分圧依存性から離れ始め,以下の欠陥反応が支配的になることがわかった. Cr_2O_3【double arrow】2V^<′′′>_<La>+2Cr^×_<Cr>+3O^×_O+3V_O (3) この酸素分圧では欠陥生成反応に酸素が関与しなくなり,Po_2依存性がなくなる. スケール/合金界面では酸素分圧がCr_<Ni-Cr>/Cr_2O_3平衡分圧まで低下しているのでLaCrO_3中の拡散は(3)式が支配的な条件で起きているものと考えられる.
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