研究概要 |
金属と炭素の新しい複合材料を創製する目的で金属とフラーレンのメカニカルアロイング(MA)を行った。Al,Cu,Fe,Ni,Sn,Ti,Znなどの金属(M)に0.3モル%のC60(C70)を加えてメカニカルアロイングした。MA中のフラーレン分子の安定性を調べる目的でC60(C70)に対するボールミルの影響を調べた。固体フラーレンのfcc構造が長時間のミルによりアモルファス構造へ変化することがX線回折と高分解能電子顕微鏡観察により明らがとなった。ミルしたC60(C70)を液体クロマトグラフィーと赤外線吸収による測定を行ったところC60(C70)分子の構造は少なくとも3600ksまでのミルに対して安定であった。しかしミル時間の増加にともなってC60の割合は減少し、代わってC60のダイマーやポリマーが増加した。金属とC60(C70)を720ksミルした場合Al-とZn-C60(C70)系において投入したうちの僅かの部分のC60(C70)が残留することが判明した。一方Cu,Fe,NiやSnにおいてはC60(C70)の分子構造は失われていた。MA後の金属中でのC60の安定性は金属の属する周期律表でのグループにより判断できることが分かった。M-C60(C70)とM-グラファイトMA粉末焼結体は金属(M)がCu,FeとNiの時ほぼ同じ硬さを示した。しかしAl-C60(C70)MA粉末焼結体はAl-グラファイトMA粉末焼結体よりも40%高い硬さを示した。一方Znの場合はZn-C60(C70)MA粉末焼結体はZn-グラファイトMA粉末焼結体の半分以下の硬さであった。
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