研究概要 |
金属板のプレス加工によって深い容器状の製品を成形しようとする場合には,深絞り加工の後に多工程の再絞り加工やしごき加工を施さねばならない.このような多工程の成形では,各工程ごとに一組の金型が必要になるため,金型コストが割高になり,またリ-ドタイムの短縮が図れないという問題がある. 本研究では,従来の円形ブランクの代わりに絞り変形を受けるブランク外周部を複数箇所カットしたいわゆる展開ブランクを使用して,1回の絞り加工において深い容器を作成できる深絞り法の開発を行った. 展開ブランクを使用する場合,ブランク外周部のカット数が少ないほど成形された容器側壁部の継ぎ目(溶接部)の数が少なくなって好都合であるが,カット数が少な過ぎると絞り抵抗を減らすことができず破断するという問題がある.そこで,まず円筒容器成形において,ブランクのカット数および展開ブランクの形状とフランジ部の変形状態および成形限界との関係を調べ,破断および容器側壁部の継ぎ目部に隙間なく成形するための最適な展開ブランク形状を明らかにした.また,本成形法では,展開ブランクの形状のみならず,ブランクの材質と板厚,しわ押さえ力,ポンチとダイスのクリアランス,ダイス肩半径などの加工条件によって,容器側壁部に生じる継ぎ目部の隙間が異なる.円筒および角筒容器の成形を行い,これら加工条件と製品の形状・寸法,板厚ひずみ分布,弾性回復(スプリングバック)等との関係を詳細に調べ,最適加工条件を明かにした.さらに,フランジ部の両端に溝加工を施した展開ブランクを使用して,容器側壁部の継ぎ目部を加工中に機械的接合できる加工法を考案した.そして,良好な接合状態が得られる加工条件を明らかにした.
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