本研究は、特に微視的な見地から複合材料を含む高分子材料の腐食劣化機構の解明を目的とするものである。腐食劣化反応の起きていると考えられる腐食層のフロントや複合材料における第2相(強化繊維やフィラー)との界面に着目し、具体的には微視的にどこまでが変色を含めた物理的な変化を受け、どこまで外部環境が拡散侵入し、最終的にどこまでが実際に化学反応を起こしているのかを解明することが鍵となる。そして機構解明により、高耐食性FRPシステムの設計指針を得ることが最終的な目的である。 初年度は、充てんした粒子のために予想以上の充てん効果が発現し、表面の腐食した生成物が全て溶液中に溶出してしまったため、顕微FT-IRを用いた反応した部分の評価を含めて詳細な評価が行えなかった。しかしながら、充てんした粒子の周りに環境液が浸入していることなどから、接液表面の効果を考慮したモデルにより大略粒子充てん複合材料の腐食に及ぼす充てん効果を明らかにすることができた。 そこで今年度は、腐食生成物を表面に残す(腐食層形成型)の主鎖の長いエポキシをマトリックスとした複合材料について充てん粒子の形状、充てん量および粒径を変えてその微視的腐食機構について検討した。その結果、今回取りあげたマトリックス樹脂では腐食層を形成した。また、その腐食速度を評価すると、不定形と球形では不定形が、充てん量については高充てんが早い腐食を示すものの、粒径の効果はほとんど認められず、腐食層形成型についても昨年度の接液表面の効果を考慮したステレオロジーに基づくモデノレにより複合材料の腐食機構が説明されることが明らかとなった。
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