シリ力球形粒子付カンチレバーを原子間力顕微鏡に用いることにより、シリカ粒子-雲母板間およびシリカ粒子-シリカ平板間の相互作用力を直接測定した。その結果、以下のことが明らかとなった。 <非水媒体中での付着力> 水溶性溶媒であるアルコール中では、ある相対水濃度において付着力は極めて大きな極大値を持つ。また、親水基の異なる溶媒でも同様の結果が得られた。この付着力は水の相分離による架橋力と溶媒分子自身の界面活性効果の競争で決まると考えられた。また分子シミュレーションにより、ある相対水濃度において付着力が増大することが確認された。 親水基を持たないアルカン中では微量の水の存在により付着力が激増するが、アルコールを混入すると界面活性効果により付着力が減少する。またHLB値の低い非イオン性界面活性剤の添加でも同様の傾向が見られた。HLB値の高い界面活性剤では、長距離引力が発生するとともに表面近傍では吸着層による立体反発斥力が観測された。 <表面物性と相互作用力> 界面活性剤水溶液中及び改質剤によって疎水化改質した表面間の引力は、界面活性剤中では低い疎水化度でも引力が発生するのに対し、改質表面間では接触角80°以上でのみ引力が確認された。この違いは吸着ドメイン構造の違いによるとともに界面活性剤による影響も示唆された。また改質した表面間の相互作用力を通常の連続モードで測定するとヒステリシスが現れるが、静止測定を行うとヒステリシスが現れなかったことから、いわゆる疎水性相互作用力は動的なメカニズムによっていることが示唆された。 <表面状態> 付着力は、AFM探針、粒径4μm及び9μmのシリカ粒子、いずれの場合も、オーダー的には近い値となった。AFM像による検討より、付着力は巨視的な粒径よりは実際に接している部分の形状に大きく依存すると考えられた。
|