自己フィードバック型素過程をもつBelousov-Zhabotinskii(BZ)反応と水相中で均相核発生が起きる酢酸ビニルの乳化重合反応を非平衡操作の流通型反応装置で行い、得られる創発的特性をできるだけ一般化する方向で解析した。両化学プロセスの不安定性、分岐特性と精密な制御性について調べ、化学工学の新しい設計概念である創発的シンセシスの構築のための指針を得た。 [1] BZ反応に関しては(1)CSTRのみによる複雑系反応プロセスの不安定性の分岐特性を調べる実験を行い、単一ピーク振動とカオス的振動の間の遷移域に間欠カオスが出現する窓がある分岐シナリオを得た。(2)CSTRを上流側に前置反応器として、下流側に流れ方向に拡散抵抗のあるテイラー渦流反応器(TVFR)を連結した流通系反応装置において化学振動の伝播機構を調べる実験を行った結果、TVFR内の入口部では非線形カップリングによる乱れや準周期性振動が現れるが、下流では流れ方向に化学振動が安定化することを見いだした。 [2] 酢酸ビニルの乳化重合反応を履歴性に留意した特別な原料供給ラインによるCSTRで行い、核発生-成長過程と1次粒子の凝集過程が交互に間欠的に起きる機構を見いだし、創発的特性の精密制御による粒径分布制御の可能性を見いだした。
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