研究課題/領域番号 |
09450292
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
寺本 正明 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (60026086)
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研究分担者 |
牧 泰輔 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助手 (10293987)
松山 秀人 岡山大学, 環境理工学部, 助教授 (50181798)
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キーワード | 熱誘起相分離 / 非溶媒誘起相分離 / 多孔膜 / 非対称構造 |
研究概要 |
高分子/溶媒の溶融溶液の一方からのみ溶媒を蒸発させ、溶液内に高分子濃度勾配を形成させた後、相分離を誘起させることで非対称性多孔膜が作製できることは、昨年度の検討により明らかとなっている。今年度は冷却速度や冷却温度という冷却条件の影響を検討した。冷却温度が減少するほど冷却速度が増加するため、膜底面での孔径は減少した。一方、冷却温度が高く、膜溶液の上面がbinodal線の外側にある条件下では膜の上面にskin層が形成された。このような高分子濃度勾配に加え、膜両面での冷却速度差を形成させた場合には、膜の上面にskin層を持つ明確な非対称性構造が得られた。 さらに、エチレンとアクリル酸(Zn塩)のコポリマーを用い、TIP法とdryプロセスのハイブリッド化により、親水性の非対称性膜の作製について検討を行った。多くの限外ろ過膜や精密ろ過膜は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデンといった疎水性ポリマーで作製される。しかしこの様な疎水性膜は、溶質の吸着や孔の目詰まりによる性能の劣化という欠点を持っている。特にタンパクの分離の場合には、膜表面との疎水性相互作用のため、膜の性能劣化は顕著である。ここでは、親水性部と疎水性部を有するコポリマーを用い、疎水性部の結晶化による高安定性を併せ持つ親水性多孔膜の作製を行った。まず、動的な相平衡関係を明らかとした。コポリマー中のアクリル酸分量が増加するにつれ、binodal線は高温側へ、また結晶化温度は低温側へシフトした。膜構造は、初期高分子濃度や冷却速度と関連づけて検討された。高分子濃度の増加や冷却速度の増加は、孔径の減少をもたらすことがわかった。さらに、dryプロセスを併用することにより、膜上面にskin層を有する非対称性膜が有効に作製できることを明らかとした。蒸発時間の増加により膜上面の孔径は減少したが、膜底面の孔径にはほとんど変化がなかった。
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