研究課題/領域番号 |
09450293
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
井上 勝利 佐賀大学, 理工学部, 教授 (90039280)
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研究分担者 |
大渡 啓介 佐賀大学, 理工学部, 助手 (70243996)
吉塚 和治 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (70191567)
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キーワード | カリックスアレーン化合物 / イオン、分子認識 / 定量的構造物性相関 / 希土類金属 / カテコールアミン / 鉛 / 溶媒抽出 / 計算機化学 |
研究概要 |
カリックスアレーン化合物は環構造に由来する特異なイオン認識および分子認識機能を有し、他の抽出剤では見られない特異な抽出挙動を取ることがこれまでの研究で見出された。本研究においてはこのような特異な認識現象メカニズムを計算機化学の手法による予測と実際の実験との両面から調べることにより解明することを試みる。このために平成10年度においては以下の研究を行った。 1) 計算機による定量的構造-物性相関(QSPR)の予測計算の研究 上記のように計算機化学の手法によりカリックスアレーン化合物の分子構造と特異な認識機構との相関関係を明らかにするための第1段階として定量的構造-物性相関(QSPR)の手法を確立するためにカリックスアレーン化合物よりも分子構造が簡単で理解が容易な様々な酸性燐化合物を用いて以下の研究を行った。 (1-1)各種の酸性有機燐化合物の構造と希土類金属イオンの選択的抽出特性の相関に関する分子力場計算;各種の酸性有機燐化合物および水と配位した希土類金属錯体の新しい分子力場をMOMEC上で構築した。この分子力場を希土類金属錯体の構造計算から得られる立体エネルギーと抽出平衡定数とのQSPRへ応用したところ、良好な直接的相関関係が得られた。このことにより、この分子力場は希土類金属を選択的に抽出することができる新たな酸性有機燐化合物を分子設計するための有効な分子モデリング法であることが示された。 (1-2)ビス(2-エチルヘキシル)燐酸によるカテコールアミン類の溶媒抽出系へQSPRの適用;ビス(2-エチルヘキシル)燐酸のクロロホルム、ヘキサンおよびトルエン溶液を用いて希塩酸中からドーパミン、アドレナリン、およびノルアドレナリンの3種のカテコールアミンの溶液抽出について研究し、抽出反応を明らかにすると共にその平衡定数を算出した。これらの平衡定数についてQSPRを適用し、溶媒効果を考慮した半経験的分子軌道計算により相関関係を定量的に説明することができた。 2) カリックス[4]アレーンカルボン酸誘導体による鉛イオンの抽出機構の研究 カリックス[4]アレーンカルボン酸誘導体の鉛イオンに対しての高い選択性の発現機構を明らかにするため、Job法、ローディング法、抽出のpHに対しての依存性の検討等を溶媒抽出の実験の他、抽出錯体の^1H-NMRのケミカルシフトによる検討も行った。その結果、鉛イオンの抽出においては他の金属の抽出とは大きく異なり、1つの配位子に対して2つの鉛イオンが段階的に配位するというこれまでカリックスアレーン化合物の常識とは異なる挙動をすることを見出した。
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