研究概要 |
本研究は、申請者らのグループで世界に先駆けて開発した全く新しい原理に基づく均相系非競合型免疫測定法、すなわち「抗原の存在によって誘導される可変領域断片VH,VLの複合体形成現象」を利用した蛍光共鳴エネルギー移動オープンサンドイッチ法の適用範囲を広げることを狙ったものである。すなわち、種々の抗体の可変領域断片VH,VLにこのような抗原誘導型複合体形成能を付与するための普遍的な方法を開発しようというものであり、世界的に見て極めてユニークで独創性に富む研究である。また、このような普遍的な方法の開発によって、さまざまの単価抗原、多価抗原の濃度を全く同じ方法で、極めて高速かつ簡便で再現性良く測定できる均相系非競合型免疫測定法の実用化が期待できる。 本年度は、抗ニワトリリゾチーム抗体HyHEL-10以外にも、抗原の添加によってVHとVLの複合体形成が誘導される可変領域Fvを持つ抗体が普遍的に存在するかどうかを明らかにすることを目的とした。具体的にはハプテン抗原であるジコキシンに対する抗ハプテン抗体および抗インスリン抗体などを生産するハイブリドーマ細胞のライブラリーから抽出したmRNAを材料としてVH,VLのcDNAライブラリーを作製し、表面プラズモン共鳴バイオセンサーなどを利用して目的に適う特徴を持つ抗体の有無を検出した。その結果、抗ジコキシン抗体については抗原依存的なVH,VLの結合が観測され、均相系非競合型免疫測定法に応用可能な抗体であることが示唆された。また、抗インスリン抗体については、6種類の抗インスリン抗体可変領域FvのcDNAをクローニングし、これを大腸菌によって発現し、精製した後に抗原誘導型複合体形成能を評価したところ、6種類の内の2種類において抗原依存的なVH,VLの結合が見られた。以上の結果から、抗原の添加によってVHとVLの複合体形成が誘導される可変領域Fvを持つ抗体が普遍的に存在することが明らかとなった。
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