研究概要 |
本年度は,主に走査型電気化学顕微鏡(SECM)の探針上で発生させたHOラジカルを利用した酵素のパターンニングに関して検討した. SECMの探針(Ptマイクロ電極,半径,7.5μm)を自己集合的に単分子膜(SAM)を固定したガラス基板に近接させ,電気化学的にHOラジカルを発生させた.発生したHOラジカルは,探針近傍の基板表面のSAMを分解し,局所的にガラス面を露出させる.SAMの疎水性が高い場合には,この手法により基板上に親水/疎水パターンを作製することができた.得られた基板をジアフォラーゼ溶液に浸漬,洗浄後,SECM計測を行った.その結果,HOラジカル処理した親水部ではジアフォラーゼの触媒電流が小さく,ジアフォラーゼは疎水性表面に吸着しやすいことが明らかとなった. SAMが親水性の場合には,架橋剤を用いることにより,酵素パターンが作製できた.例えば,末端に-NH2を有するSAMで固定した基板では,グルタルアルデヒドを利用することによりジアフォラーゼのパターンを作製できた.また,末端官能基が-SHであるSAMを用いることにより,反応した部分に酵素を固定したポジパターンを作製できた.-SHはH202/H2SO4溶液中で-S03Hに変化することが知られている.従ってHOラジカルによる局所SAMの除去後,基板をアミノ化,更にジアフォラーゼと反応させることにより,HOラジカルが反応した部分のみに酵素が固定されたパターンを得ることができた.
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