研究概要 |
本研究は信頼性の高い分子理論と計算方法を開発するとともに、生体に関連した光化学反応を研究し、その成果を踏まえてこれらの反応系を理論的に設計することをめざしている。計画している主要なテーマは、(1)視覚のメカニズムの分子論的解明(レチナ-ルの光異性化反応)、(2)光合成のメカニズムの解明(反応中心である金属ポルフィリンの光励起による電子 伝達機構)、(3)現象の理解を分子レベルにとどまらずメゾスコピック系にまで拡張するための理論の開発である。 課題(1)については、polyenes,polyacenesの励起状態をMultireference Moeller-Plesset法で計算し、交互炭化水素系の励起状態に適用できるalternant symmetryの概念を再評価した。また、比較的大きな分子の励起状態の計算法を確立したといってもよい。 課題(2)については、Free-base,Mg,Zn-Porphyrinsの励起状態を研究し、Qバンドの吸収強度を強くするにはどのようにすればいいのかを理論的に解明し、染料の分子設計を行った。 課題(3)では、Graft-on Methodを新たに開発している。この方法は、Hartree-Fock法やCASSCF法を基礎に、電子相関エネルギーは electron cusp条件を満足する電子密度の汎関数から評価しようとするである。すでに、電子相関の物理的描像から簡単な表現で得られるColle-Salvetti型の汎関数を提案した。予備的計算では形がsimpleにもかかわらず、大変いい結果を算出する。また、2電子積分の新しい計算法とそのプログラム開発、対角化に代わるorbital optimization法の開発も進めている。いづれも数から数千原子系を扱うための理論開発である。
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