研究課題/領域番号 |
09450315
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
工藤 徹一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90205097)
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研究分担者 |
日比野 光宏 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (20270910)
水野 哲孝 東京大学, 工学系研究科, 助教授 (50181904)
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キーワード | 炭化タングステン / 過酸化水素 / マロン酸 / プロトン伝導性 / タングステン酸化物2水和物 / 活性化エネルギー / 層間水 / 水素結合ネットワーク |
研究概要 |
炭化タングステンと過酸化水素の反応によりシュウ酸配位子をもつ過酸化ポリ酸(シュウ酸基/W(≡n)=0.125)が生じる。また、金属タングステンと過酸化水素の反応によって生じる。ポリ酸にシュウ酸やマロン酸水溶液を作用させても同様なポリ酸(n=0-0.3)が得られ、これらは比較的高いプロトン伝導性を示す。プロトン導電率はnとともに指数関数的に増大する。とくに、n=0.3のマロン酸配位ポリタングステン酸の導電率は0.01S/cm(25℃)に達する。そこでこれらのポリ酸をプロトン伝導性固体電解質材料として評価した。 高温・高湿雰囲気(80℃、相対湿度80%)下で導電率の経時変化を調べたところ、数百時間のスケールで徐々に導電率が1ないし2桁程度低下するものの、比較的高い水準に止まった。試験後の試料をX回析で調べた結果、多量のタングステン酸化物2水和物が生じていることが確認された。従って、経時変化後の試料ではこの結晶性水和物がプロトン伝導に関与しているものと考えられる。 タングステン酸化物2水和物(WO_3・2H_2O)のプロトン伝導性について、室温から150℃の温度範囲で水蒸気圧を変えながら評価した。室温付近では活性化エネルギーが0.15eVと小さく、多層吸着水中をプロトンが輸送される表面伝導機構が支配しているものと考えられる。一方、100-150℃では、活性化エネルギーが0.4eV程度と大きく、層間水と配位水がつくる水素結合ネットワーク中でプロトンが動く、いわゆる、バルク機構が支配していると思われる。150℃、飽和水蒸気圧下での伝導率は0.01S/cmと大きく、しかも湿度を低下しても導電率の急激な低下は見られないので、燃料電池などに用いる固体電解質として有望である。
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