窒化物負極と酸化物正極を組み合わせた時のセル特性を主に検討した。窒化物は全てリチウムを最大限収蔵した状態で合成される。従って充電から出発する正極活物質と組み合わせる場合は、前もってリチウムをどちらかから除去する必要がある。我々が合成したLi_<2.6>Co_<0.4>Nには最初からかなりのリチウム欠陥があることが判明した。このおかげでLi_<2.6>Co_<0.4>Nはリチウムを受け入れることも可能である。そこで正極としてLiMn_2O_4をそのまま用い、欠陥を有するLi_<2.6-x>Co_<0.4>Nと組み合わせて充電から電池をスタートした。一般にLi_<2.6>Co_<0.4>Nからリチウムを脱離させてゆくにつれてアモルファス化が進行し、1回目と2回目以降の曲線が異なることが報告されている。しかしこのセルにはそのような違いが見られなかった。これはLi_<2.6>Co_<0.4>Nのもつ空孔を利用してリチウムの挿入脱離を行っているため、アモルファス化が進行するほどリチウムが脱離していないからと考えられる。Li_<2.6>Co_<0.4>Nのリチウム脱離時(セルにおける放電)における初期電位がサイクルを重ねる毎に上昇する現象が確認された。これは充電と放電において同量のリチウムの挿入脱離が行われていないことを示している。正極単体の特性曲線を見ると電解液の分解が同時に起こっているため充電側の容量が放電側より大きくなっている。この現象がLi_<2.6>Co_<0.4>N内のリチウム量の変化をもたらしたものと考えられる。Li_<2.6>Co_<0.4>Nを負極として用いる場合、以上のような点に留意してセルを作成する必要がある。次にあらかじめヨウ素を窒化物に作用させ、リチウムを酸化除去することでさらにエネルギー密度の高いセルを作成することを試みた。このような処理によって窒化物のリチウム受け入れ能力は大きくなり、850mAhg^<-1>といわれる最大容量を利用することができる。Li_<1.37>Co_<0.4>N/LiMn_2O_4セルの充放電特性を調べたところ、正極であるLiMn_2O_4について約100mAhg^<-1>、負極であるLi_<1.37>Co_<0.4>Nの容量は約400mAhg^<-1>であり、非常に大きな容量が得られると同時に可逆性にも優れていることが分かった。
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