本科研費に基づき、高活性・高基質立体選択性機能を発現する両親媒性プラスチック酵素の創製・利用研究を、(1)エステラーゼ酵素活性及び(2)酸素添加酵素活性を発現するプラスチック酵素に焦点を絞り、それらの創製・利用研究を図った。プラスチック酵素の活性部位として、エステラーゼ活性発現には、N-アクロイルーL-ヒスチジンを、酸素添加酵素活性発現には、N-アクロイルーL-ヒスチジンを配位子とする鉄(IIまたはIII)ポルフィリン錯体を用い、基質立体選択性機能を具備させた。前者の1例として、Z-L-アミノ酸エステルをターゲット基質とし、その加水分解反応の遷移状態類似体である1-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)イソブチルホスホン酸モノフェニルエステル(ラセミ体)を鋳型として合成し、プラスチック酵素の活性部位とを予めDMSO中で水素結合等の多点相互作用をさせておき、プラスチック酵素骨格形成を、アクリルアミド、疎水性スチレン、ビスアクリルアミド系架橋剤及び末端に両親媒性アンモニウム基を持つアクリルアミド系モノマー等を用いた重合を各種架橋率下で行い、反応キャビテイーに活性部位が1つ存在する状態とした。後者の酸素添加プラスチック酵素は、鋳型を導入せず、同様に作製した。エステラーゼ活性は、89%e.e.で、活性部位単独の2倍の反応速度をもたらし、モノオキシあるいはジオキシ酸素添加では、スチレンのヒロドキシル化(98%選択率)及びトリプトファンの環解裂酸素添加(53%選択率)をもたらした。研究成果の詳細については、論文を参照していただくとして、本研究により両親媒性プラスチック酵素の創製・利用の見通しができた。
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