研究課題/領域番号 |
09450319
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真嶋 哲朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00165698)
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研究分担者 |
一ノ瀬 暢之 大阪大学, 産業科学研究所, 助手
藤乗 幸子 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (50197844)
石田 昭人 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (20184525)
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キーワード | ラジカルイオン / 可視光スイッチ / 光応答 / 光機能性 / 放射線化学反応 |
研究概要 |
ラジカルイオンは可視光領域に強くシャープな吸収を持ち、また構造や置換基の種類によってその吸収位置が変化する。電子線パルスとNd:YAGレーザーの同期発振システムを使用し、ラジカルイオンを作業物質とすることによって、ラジカルイオンの可視光スイッチ機能による新しい多重応答分子系の開発を行った。具体的には、ピレンラジカルアニオンの光励起状態(Py^<-*>)からビフェニル(Bp)などの消光剤Qへの分子間電子移動消光による光応答について検討した。この分子間電子移動消光の効率はQの電位、構造に依存すること、分子間電子移動消光において、消光速度は拡散律速で支配され、初期に生成するPyとBp^-の対(Py/Bp^-)_<sulv>での逆電子移動のため消光効率が低下することを見出した。そこで、Py(1-pyrenyl)とBp(4-biphenylyl)をトリメチレン鎖((CH_2)_3)で連結させたPy(CH_2)_3BpにおけるPy^<-*>からBpへの分子内電子移動消光について検討した。電子線パルス照射によって生成したPy^-(CH_2)_3Bpにレーザー光照射(532nm,5ns)を行ったところ、過渡吸収の変化はほとんど観測されなかった。これから、Py^-(CH_2)_3Bpの光励起によって生成するPy^<-*>(CH_2)_3Bpにおいて、Py^<-*>からBpへの分子内電子移動消光、および、Bp^-からPyへの発熱的分子内電子移動が高速(5ns以内)・選択的に進行していることが示唆された。つまり、レーザーパルス(時間幅5ns)照射後ではこれら分子内電子移動消光とその後の発熱的分子内電子移動の過渡現象は終了しているため、過渡吸収は変化しなかったと説明できる。この結果はPy(CH_2)_3Bpを作業物質として、Py^-の光反応を利用した高速・選択的多重応答分子系が可能であることを示唆している。
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