研究概要 |
本研究では,ナトリウムに焦点を合わせ,ホストとしての炭素材料の構造・組織とナトリウムに配位する溶媒分子の2つの因子を変えることによって,ナトリウムのインターカレーション挙動,ひいては有機溶媒中でのインターカレーション反応を支配している因子を解明することを目的とした. ナトリウムについて,炭素鎖数も異にするエーテル中からのインターカレーションを,様々な結晶性をもつコークスを用いて検討した.その結果,コークスの結晶性が低いほど,溶媒のコインターカレーションを阻害する抵抗力が大きくなり,配位力が弱く,嵩ばる分子ほどコインターカレーションし難いことが明らかになった. ドナー型のナトリウムと対比するため,アクセプター型の塩化鉄について,そのニトロメタン中からの三元系インターカレーション化合物生成に対するホスト効果を検討した.コークスにおいては,インターカレーション可能な黒鉛化度の下限は,塩化鉄の濃度に大きく依存し,0.6Mの溶液では3000℃処理コークスでも全く反応しないのに対して,4.8Mの溶液では2100℃処理コークスまでインターカレーションが可能であった.また,1900℃以下の温度で処理したコークスとは全く反応しなかった.熱分解炭素においては、結晶性や溶液の濃度に依存せず,同じステージ数のインターカレーション化合物を生成した. インターカレーションに伴うホスト粒子の膨張・崩壊に着目し,反応後のホスト粒子の形態を観察した.結晶子が三次元的に配向しているコークスの場合は,粒子の崩壊(degradation)はゲスト化学種の大きさのみで決まっており,特に,アルカリ金属の場合は,溶媒分子のコインターカレーションの有無と完全に一致していた. これらの実験結果を基に,ナトリウムを中心としたアルカリ金属,さらに塩化鉄が,それらの有機溶液中で,低結晶性炭素材料へのインターカレーション機構を考察した.
|