研究概要 |
1.目的 当研究者らは、最近、新たな層状窒化物系超伝導体の開発に成功し、インターカレーションによって、約13Kの比較的高温で超伝導体となることを見い出した。この化合物はCdCl_2型構造を有するβ-ZrNClで、塩素原子よりなる最密パッキング層の間に、ZrNの2重層がサンドイッチされている。本研究では、これら一連の層状結晶およびその層間化合物を取り上げ、高い超伝導臨界温度と構造および組成の関係を詳細に調べ、超伝導と構造の次元性の関連性を解明する。超伝導は層間にインターカレーションしたアルカリ金属からZrN層への電子移動によってもたらされると考えられるが、その電子ドープ量はアルカリ金属の反応量によって制御できる。ドープ量および結晶構造と超伝導特性の関連性を実験化学的に明らかにしたい。 2.研究成果の概要 (i)層状窒化物MNX(M=Ti,Zr,Hf;X=Cl,Br,I)の合成とインターカレーション β-HfNClを合成し、リチウムのインターカレーションを行った.約26Kの臨界温度を有する層状窒化物超伝導体となることを見いだした.これは、合金系超伝導体で報告のあるどの臨界温度よりも高い値であり、新規高温超伝導体に位置づけられる物質である. (ii)α型層状窒化物TiNClへのピリジンのインターカレーションを行った.TiNCl1モル当たり1/3モルのピリジンがインターカレーションし、約4Kで超伝導体となることを見いだした.α型層状格子も超伝導のマトリックスとなり得ること、有機塩基による電子ドープによっても超伝導が実現できることを明らかにした. (iii)MNCl(M=Zr,Hf)超伝導薄膜の合成と光物性測定 KrFエキシマレーザーによる超高真空アブレーション装置を組み立て、薄膜作成の準備を行った.引き続き、窒化物薄膜の作成を行う予定である.
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