研究概要 |
層状結晶β-HfNClはZrN2重層を有し、窒化物層は塩素原子の細密パッキング層の間にサンドイッチされている。当研究者は先に、結晶層間にリチウムをインターカレートし、窒化物層に電子をドープすると、約26Kの超伝導体となることを報告した。この発見は窒化物層は、銅酸化物系超伝導体におけるCuO_2層と同様に、高温超伝導の優れたマトリックスとなる事を示唆しており、注目される。本年度は、新規層状窒化物の合成とインターカレーションによる超伝導の可能性について検討した。 1。 β-MNX(M=Zr,Hf;X=Cl,Br,I)の高圧合成 6面体加圧高圧合成装置を用い、β-HfNClだけでなく、標記のすべての組み合わせについて、β-型層状結晶の合成に成功した。β-型層状結晶は当初、α-型層状結晶の高温型多形と考えられたが、構造化学的な考察から、β-型構造はα-型相の高密度相であることを明らかにした。 2。 β-MNX(M=Zr,Hf;X=Cl,Br,I)結晶の電子ドープと超伝導 高圧合成した試料を含めて、すべてのβ-型層状結晶へのリチウムのインターカレーションを行い、超伝導体となることを明らかにした。超伝導の臨界温度は窒化物層の種類によりほぼ決定され、ハロゲンイオンの置換による効果は少ない。 3。 α-TiNCl層状結晶へのピリジン分子のインターカレーションと新規超伝導体の合成 FeOCL型構造のα-型層状窒化物TiNClの層間にピリジン分子がインターカレーションすることを見出した。ピリジンは拡散機構で層間に取り込まれ、約6Kで超伝導体となることを明らかにした。有機塩基のインターカレーションにより超伝導が発現した最初の物質として注目できる。 4。 窒化物超伝導薄膜の合成と特性評価 レーザーアブレーション法により、Si(111)およびSi(100)基板上にZrN(100)およびZrN(111)薄膜を合成した。ZrN/Si_3N_4人工超格子の作成に成功しており、電子ドープの可能性について検討を行っている。
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