(1)酸化・還元挙動:鉄イオンの挙動については、アルカリボレート系ではアルカリ含有量が20mol%以上の時溶融温度、アルカリ含有量およびアルカリのイオン半径の増大に伴い半波電位は負電位側にシフトした。このことはFe^<3+>の増加を意味する。アルカリ含有量が20mol%より少なくなってくるとFe^<3+>は酸性酸化物としての働き以外に、塩基性酸化物としても働き、フリーのFe^<3+>の生成が示唆された。アルカリシリケート系ではアルカリ含有量の増大に伴い負電位側にシフトしたが、イオン半径については正電位側にシフトした。このことはイオン半径の小さいアルカリほどFe^<3+>とより安定なクラスターを形成できるため、アルカリイオン半径の増大に伴いFe^<2+>がFe^<3+>に対して相対的に安定化することによるためと推察された。スズイオンについては、アルカリボレート系では鉄の時と同様の傾向が見られたが、アルカリシリ-ト系ではアルカリ量の増大に伴い半波電位が正電位側にシフトし、イオン半径の増大につれて負電位側にシフトした。これらのことは、融体中のスズイオンの存在状態は、急冷ガラスのものとは異なることを示唆している。 (2)ガラス中の遷移金属イオンの状態別分析:ガラス中に存在する鉄イオンの状態分析を、湿式法並びにガラスの吸収スペクトル測定による非破壊分析法により行った。ガラスを均一な厚さに切断し、鏡面状に研磨したものの吸収スペクトルを測定し、単位厚さあたりの1030nmの吸収強度を測定した。さらにο-フェナントロリンを用いた湿式分析によりFe^<2+>量および全鉄量を求め、前述の吸収強度との関係を示す検量線を作成した。得られた検量線から、ガラス中の量を求めた結果は、湿式法のものとよく一致した。
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