研究概要 |
当研究室でここ数来蓄積してきたHF取り扱いのノウハウを有効に生かして種々の組成から成るHF溶融塩(HF-塩基溶液等)を合成し、HF溶融塩を反応場およびフッ素源として生物活性物質・機能性素材等の中間体や原体としての利用が期待される有機フッ素化合物合成のための新規精密制御フッ素化法の開発を行なった。平成10年度の実績は以下の通りである。 1.HF溶融塩中でヨードトルエンを電解酸化すると容易にヨードトルエンジフルオリド(Tol-IF_2)が生成し、化学的に合成したTol-IF_2より不純物が少なくex-cell法による精密合成フッ素化剤として優れていることを明らかにした。 2.1.項の方法で得られたTol-IF_2をHF溶融塩溶液存在下でアルキンと反応させると[E]-2-フルオロアルケニルヨードニウム塩(1)が選択的に生成することを明かにした。 3.2.項で得られた1をPd(OAc)_2および塩基の存在下、α,β-不飽和カルボニル化合物と温和な条件下でHeck型反応を行うことによりδ-フルオロ-α,β,γ,δ不飽和カルボニル化合物が得られた。反応は立体選択的に進行し1の立体は保持され、新たに生成した二重結合は[E]-型となった 4.HF溶融塩の存在下、ArIF_2と一級オレフインを反応させるとvic-ジフルオロアルカンが収率よく得られるた。一方、不飽和アルコールあるいは不飽和カルボン酸との反応ではフルオロ環状エーテルあるいはフルオロラクトンが得られた。 5.β-位にMeS基を二個もつビニルケトンをトリフルオロ酢酸水銀とピリジン-6HF錯体の存在下に反応させるとフルオロ還化反応が促進し、フルオロペンテノン誘導体が好収率で得られることを見出した。 6.有機電解部分フッ素化における支持電解質兼溶媒として優れたHF溶融塩を開発し、カルボニル等の官能基をもつ不飽和化合物、芳香核側鎖の電解フッ素化反応の開発を行った。
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