研究概要 |
前年度に引き続き,アミノアルコールに対し優れた分割能を有する新規酸性分割剤の開発を検討した。アミノアルコールの水酸基と水素結合を形成することを期待し,アミドカルボニル酸素を有する新規酸性分割剤2-(1-oxo-2-isoindolinine)-2-phenylpropanoic acid(1)を新規酸性分割剤として設計した。1の光学活性体は,対応するラセミ体を,光学活性1-amino-1,2-diphenylethanolにより光学分割することで容易に得ることができた。1はいくつかのアミノアルコールに対し比較的良好な分割能を有していた。また,晶出した難溶性塩結晶中では,カルボキシレート酸素とアンモニウム水素との水素結合により,カラム状の水素結合ネットワークが形成されており,さらに分割剤のアミドカルボニル酸素は水分子を介した水素結合により,このカラム状構造を強く安定化していることがわかった。 一方,ナフチル基がCH・・・π相互作用により難溶性塩結晶を安定化することを期待し,ナフタレン環を有する新規塩基性分割剤として,trans-1-amino-benz[f]indan-2-ol(2)を設計した。2のラセミ体に関してはbenz[f]indeneから容易に合成することができた。また,光学活性体に関しては,対応するラセミ体を光学活性ジベンゾイル酒石酸により光学分割することで,容易に得ることができた。2は広範なラセミ酸と極めて結晶性の高いジアステレオマー塩を形成し,いくつかの酸に対しては比較的高い光学分割能を有していた。このことから,CH・・・πの利用が相互作用が,分割剤の設計において有効であることが示唆された。
|