研究概要 |
1.超分子ナノリアクターの基本構造体には,会合安定性に優れたいくつかのペプチド脂質を合成し,これらの水中での自己組織化により形成されるリポソームタイプの二分子膜ベシクルを調製して用いた。 2.ナノリアクターとしての脂質リポソームに,酵素活性を保持したまま固定化できる酵素と脂質の組み合わせを種々探索し,その一つとして,NADH依存性の酸化還元酵素である乳酸脱水素酵素とカチオン性ペプチド脂質の組み合せが適していることを見い出した。 3.一方,ナノリアクターに酵素活性制御能を賦与するために,胆汁酸,アミノ酸,シクロファンの3種の分子認識素子を組み合わせたステロイドシクロファンを合成し,これをナノリアクターに組み込んだ。この超分子集合体のキャラクタリゼーションには,示差走査熱量分析をはじめ種々の物理的測定法を用いた。その結果,ステロイドシクロファンは人工レセプターとして優れた分子認識能を発現することがわかった。 4.ペプチド脂質,ステロイドシクロファン,乳酸脱水素酵素から構成される超分子ナノリアクターについて,ピルビン酸から乳酸への還元反応活性を評価したところ,ステロイドシクロファンの分子認識能とその応答機能にもとづいて,酵素活性を制御できることが明らかになった。 5.今後は,この超分子ナノリアクターのシグナルリガンドである有機ゲストと金属イオンの組み合せを変えることで,酵素活性を自在にコントロール出来るインテリジェントナノリアクターヘの展開が期待される。
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