研究概要 |
光学活性化合物の合成は現代有機合成化学の最も重要なトピックスの一つである。本研究では電極酸化を鍵段階として、入手容易で安価なα-アミノ酸を種々の有用な光学活性化合物へと構造変換し、そのための効率的な反応場、方法論を開拓することである。本年度は以下の成果を得た。 (1)L-リジンからd-threo-Methylphenidateの合成:L-バリンから誘導した不斉修飾基を持つ求核剤と、ピペリジン誘導体の電極酸化により調製したα-メトキシカルバメートとの間の不斉炭素間結合形成反応により、医薬品として重要なd-threo-Methylphenidateを高立体選択的に合成できた。 (2)ホフマン転位に適した新反応場の開拓:トリフルオロエタノール(TFEOH)溶媒を用いた電解ホフマン転位により、L-グルタミンから高い光学純度で2,4-ジ.アミノ酪酸誘導体を得ることに成功した。さらにTFEOH溶媒を用いた電解ホフマン反応で得られるトリフルオロエトキシカルボニルマミンが非対称ウレアの良い前駆体になることも見いだした。 (3)光学活性α-アミノ酸誘導体の非コルベ反応における不斉記憶現象の発見:L-セリンから誘導したオキサゾリン誘導体の非コルベ反応において、元の光学活性を記憶するという現象を発見した。 (4)環状アミノ化合物のCα-Cβ結合が効率的に切断される新方法の開拓:トリフルオロ酢酸溶媒における亜硝酸が、ピペコリン酸のCα'-Cβ'結合の切断に極めて良い試剤となることを見いだした。
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