研究概要 |
本研究では以下の課題に従い、遷移金属触媒反応を利用したホウ素反応剤の開発とそれを利用する選択的有機合成反応について調査した。平成11年度は初年度、平成10年度で開発された反応の有機合成への利用を中心に調査した。 ・遷移金属触媒によるホウ素化合物の付加およびカップリング反応を利用する有機合成 1.ジホウ素化合物を利用する有機合成(担当:石山、宮浦) すでに、ジホウ素化合物が白金触媒存在下アルキン、アルケン、1,2-ジエン、1,3-ジエン、α,β-不飽和カルボニル化合物に付加する事を報告した。今年度はさらに、高い結合角歪みを有するメチレンシクロプロパン類に対して付加反応が進行することを見出した。白金触媒によりproximal結合開列を経て、開環付加体を与えた。 2.芳香族系有機材料開発を目的としたビアリール合成(担当:宮浦、山本) ビアリールは機能性芳香族系材料として医薬品、液晶開発の炭素骨格に利用されている。これらの工業的、簡便かつ経済的合成法開発を目的としてアリールボロン酸とクロロベンゼン類のクロスカップリング反応を調査した。触媒としてニッケル触媒およびポリマー担持パラジウム触媒を用いてのビアリール化合物の合成に成功した。 3.ホウ素化合物のロジウム触媒による付加反応の開発(担当:宮浦、山本) (1)ロジウム触媒を用いる有機ボロン酸のα,β-不飽和エステル、アミドへの不斉マイケル付加反応に成功した。 (2)イミンへの有機ボロン酸の付加反応を開発しイミンのアリール化に成功した。 ・遷移金属触媒によるアリル型ホウ素反応剤の開発と有機合成への利用 1.アリル型ホウ素反応剤の開発(担当:山本、宮浦) (1)触媒的二重結合異性化反応によるγ-アルコキシアリルホウ素化合物の合成と官能基を有する基質を用いた分子内アリルホウ素化反応を調査し、環状エーテル化合物の立体選択的合成に成功した。
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