新しい修飾核酸の合成とその人工RNA制限酵素創製への応用

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09450337
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 沢井 宏明 群馬大学, 工学部, 教授 (70012648)
• 研究分担者: 尾崎 広明 群馬大学, 工学部, 助手 (90211820)
• キーワード: DNA / 修飾核酸 / 2'デオキシウリジン誘導体 / α-ヌクレオシド / アンチセンス核酸 / RNA分解活性 / トリスアミン / 標識化

研究概要

昨年度までの研究で、大量合成法を確立した、新しい修飾核酸合成の鍵化合物となる5位に活性な置換基を有するデオキシウリヂン誘導体を組み込んだ修飾オリゴDNAをDNA合成機を用いて合成した。次いでこのオリゴDNAを固相担体に結合した状態で,トリス(2-アミノエチルアミン)で処理することにより、デオキシウリヂンの5位にRNA切断活性を有すると認められたトリス(2-アミノエチルアミン)を導入した新規修飾オリゴDNAを合成した。この修飾オリゴDNAは対応する相補的なターゲットRNAの切断活性を示すことが認められた。しかし、その活性は弱かった。そこで、新たに、非天然型のα-グリコシド結合を持つ、トリスアミン導入修飾オリゴDNAの合成とそのRNA切断活性についての検討を進めた。まず、5-位に活性な置換基を持つα-デオキシウリヂン誘導体の立体選択的で簡便な大量合成法を確立した。さらに、このα-デオキシウリヂン誘導体の5位にトリス(2-アミノエチルアミン)を導入後、修飾オリゴDNAの内部及び末端部に組み込んだ。内部にα-デオキシウリヂン誘導体を組み込んだ修飾オリゴDNAは対応する相補鎖DNAあるいはRNAとの2重鎖形成能が大きく低下する事が認められた。
この修飾オリゴDNAを用いて、ターゲットRNAの切断反応を検討した。RNAのうち、修飾オリゴDNAに導入したα-デオキシウリヂン誘導体の触媒のトリスアミンが作用したと考えられる一カ所が配列特異的に切断される事を認めた。この修飾オリゴDNAはターゲットRNAと2重鎖を形成した時、α-デオキシウリヂン誘導体のため部分的に2重鎖の形成が出来なくなり、RNAが局所的にゆがみを生じ切断を受けやすくなっている事が、分子動力学の計算から示唆された。しかし、切断効率は未だ満足行くものでなく、さらに新しいタイプの修飾オリゴDNAの設計、合成を進めている。

研究成果

• [文献書誌] S.Kohgo,K.Shinozuka,H.Ozaki,H.Sawai: "Synthesis of Novel 2'-deoxyuridine Derivative Bearing a Cyanomethoxycarbonylmethyl Group at C-5 Position and Its Use for Versatile Post-Synthetic Functionalization of oligodeoxyribonucleotides" Tetrahedron Lett. 39. 4067-4070 (1998)
• [文献書誌] H.Sawai,S.Totsuka,K.Yamamoto: "Non-enzymatic,Template-Directed Ligation of 2'-5' Oligoribonucleotides.Joining of a Template and a Ligator Strand" Nucleic Acids Res.26. 2995-3000 (1998)
• [文献書誌] H.Ozaki,Y.Ogawa,M.Mine,H.Sawai: "Effect of Acridine with Various Linker Arms Attached to C5 Position of 2'-Deoxyuridine on the Stability of DNA/DNA and DNA/RNA Duplexes" Nucleosides & Nucleotides. 17. 911-923 (1998)
• [文献書誌] K.Shinozuka,A.Umeda,T.Aoki,H.Sawai: "Facile Post-Synthetic Derivatization of Oligodeoxynucleotide Containing 5-Methoxycarbonylmethyl-2'-deoxyuridine" Nucleosiodes & Nucleotides. 17. 291-300 (1998)
• [文献書誌] K.Shinozuka,T.Aoki,H.Sawai: "Synthesis and RNA Cleaving Activity of Novel Artificial RNase Bearing Polyamine Conjugated α-Uridine Derivative" Nucleic Acids,Symposium Series. 39. 229-230 (1998)
• [文献書誌] M.Mine,H.Ozaki,H.Sawai: "Effect of an Linker Arm at C5 Position of Pyrimidine Nucleoside on Thermal Stability of Duplexes" Nucleic Acids,Symposium Series. 39. 53-54 (1997)