研究概要 |
フェノキシスルホニウムイリドのシグマトロピー転位によるフェノールのオルト位選択的なアルキル化反応を基軸として、多置換ヒドロキシクロマンのエナンチオ選択的合成法を確立し、生理活性天然有機化合物の合成へ応用することを目的として検討した。 1.3位をエーテル保護した3,5-ジヒドロキシ安息香酸エステルに対し、5炭素の保護したジオールスルフィドを用いて[2,3]シグマトロピー転位反応を低温で行うと、目的とする位置に転位した生成物が主成分、目的としない異性体が副生成物として生成し、両者はカラムクロマトグラフィーで分離できることを確認した。 2.3,5-ジヒドロキシ安息香酸エチルと3,3-ジメチルアクロレインジエチルアセタールとから、ベンゼン環上に2種類の官能基を有する3-ヒドロキシクロマンを別途合成し、t-ブチルリチウムを用いてホルミル化を行ったところ、目的とする位置のみがホルミル化された化合物が位置選択的に生成することを確認した。これを還元、酸処理することにより目的とする多置換クロマン骨格を構築することに成功した。 3.o-プレニルフェノールをシリル基で保護し、エポキシ化の後に希酸で処理すると高収率で3-ヒドロキシクロマンが合成されることを発見した。そこで現在、1で述べた[2,3]シグマトロピー転位反応の目的生成物から環化反応により3-ヒドロキシクロマン構造を構築することについて検討している。この反応はすでにジアステレオ選択的に進行することがモデル実験によって確立されているので、これにより多置換クロマンの形式不斉合成が達成されることになる。
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