研究概要 |
マンガン錯体からの電子移動を用いる新しいラジカル発生法とその有機合成への利用について交付申請書に記載した研究計画に従って研究を行い次の3つの成果を得た。 1.マンガン塩触媒を用いるアリル2-ヨードフェニルエーテル類の環化 アリル2-ヨードフェニルエーテル誘導体に、3当量のn-BuLiと1当量の塩化マンガンから調製したアート錯体型マンガン反応剤を作用させるとベンゾフラン誘導体が収率74%で得られた。n-BuLiの代わりにn-BuMgBrから調製した反応剤を用いても反応は同様に進行する。まずマンガンアート錯体から基質に一電子移動が起こり、アリールラジカルが生成する。このものが分子内ラジカル環化したところでマンガンからもう一電子移動が起こる。最後にデヒドロマンガン化が起こりベンゾフラン誘導体を与えたものと考えている。 2.塩化鉄を触媒とする2-ヨードエタナ-ルアルケニルアセタールの環化 1で述べた反応においてマンガンアート錯体の代わりに塩化鉄触媒共存下にグリニャ-ル反応剤を作用させるとマンガナ-トの場合と同様に環化反応が進行することを見いだした。鉄のアート錯体からの一電子移動によるラジカルの生成、ラジカルの環化、鉄錯体との再結合という機構で進行する。 3.1,3-ジハロプロペンとマンガンアート錯体の反応 1,3-ジハロプロペンとトリアルキルマンガナ-トの反応において、マンガン-ハロゲン交換が起こり、アリルマンガンアート錯体が生成し、さらにアリル転位を経た後、マンガン上のアルキル基が隣接炭素上へ転位しながらもうひとつのハロゲンを追い出すことを見いだした。こうして生成したアリルマンガン種はアルデヒドなどの求電子剤によって収率よく捕促することができることも明らかとなった。
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