研究概要 |
以下の高分子について、X線散乱、誘電緩和測定を用い、結晶形態の観察、成長速度、非晶相における分子運動ダイナミクスの測定より、構造形成過程について考察した。 1. ポリエチレンテレフタレートのガラスからの結晶化において、誘電、X線散乱同時実時間測定を行った。結晶化に先立ち、誘電主緩和が別の主緩和に変化し、その後結晶化に伴う誘電緩和の変化が現れることを見いだした。これは結晶化前に非晶域の分子運動に変化が生じ、その後結晶ラメラの存在によって拘束を受けた分子運動の様式に変化していると解釈される。 2. アイソタクチックポリスチレンについてはX線散乱、電子顕微鏡観察(EM)、原子間力顕微鏡(AFM)により結晶化条件と成長速度、結晶形態との関係を調べた。薄膜からの結晶化ではEM,AFMより基板の種類が結晶の形態、欠陥に影響を与えること、膜厚の減少と共に拡散が支配的なるような結晶形態をとることを示した。また結晶成長速度は薄膜の厚さに逆比例することを見いだし、レプテーションモデルに基づいて解析を行った。結晶化のカイネティクスを支配する因子の1つである主緩和、ガラス転移と膜厚との関係を非晶質ポリスチレンについて誘電緩和により測定し、ガラス転移温度、緩和時間の分布の幅が膜厚と共に減少することを示した。 3. アイソタクチックポリプロピレンについて、ガラスからのスメクチック相形成におけるX線散乱実時間測定、熱測定により、一定温度でのスメクチック相形成では一定構造の相が形成されることからこの相形成ではスピノーダル分解過程ではなくむしろ核生成過程と考えられること、スメクチック相形成と共にガラス転移温度が上昇することを明らかにした。
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