研究概要 |
今年度はまず,異なる塩濃度(0.005Mから2.5M)の塩化ナトリウム水溶液中におけるヒアルロン酸ナトリウムの粘度,静的光散乱データの解析を完了し,さらにX線小角散乱実験と解析を終了した。次いでポリスチレンスルホン酸ナトリウムの合成,分別,粘度と静的光散乱測定を行うとともに,設備備品として購入した動的光散乱装置の立ち上げとポリスチレン溶液についての予備的測定を行って拡散係数が正確に決定できることを確認した。予定のサクシノグリカンについては,分別が困難なため現在も試料の調整段階にある。今年度得られた主な知見は以下の通りである。 1.分子量が約1万以下のヒアルロン酸ナトリウムはNaCl水溶液中において非摂動みみず鎖のように振る舞う。とくにその散乱関数は非摂動みみず鎖に独特の角度依存性を示し,先に固有粘度データの解析から決定した分子特性が確認された。 2.NaCl濃度が0.02M以上におけるヒアルロン酸ナトリウムの固有粘度と回転半径への排除体積効果は準二定数理論によりほぼ定量的に記述できる。しかし,0.01Mより低塩濃度においては理論と実験の一致は良くない。 3.ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは4.17MのNaCl水溶液中,16.4^○Cでシ-タ状態を実現する。みみず鎖をモデルとした場合,その分子特性は0.65nmの持続長と780nm^<-1>の単位経路長当たりのモル質量で決まる。 4.本年度に研究した塩濃度(0.05M以上)と分子量(3万から65万)の範囲内では,NaCl水溶液中のポリスチレンスルホン酸ナトリウムの固有粘度も準二定数理論の枠内で説明できる。
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