高純度で分子量の揃ったポリエチレンとポリプロピレンを用いて、高分子の結晶化の分子量依存性を初めて明らかにし、それを手がかりにして核生成と成長の分子論的メカニズムを提唱した。ポリエチレンの核生成速度は折りたたみ鎖結晶の場合にも分子量のべき乗に比例して減少することが明らかになった。これにより、先に我々が伸びきり鎖結晶について初めて見いだした「核生成速度のべき乗則」が結晶形態によらずに普遍的に成り立つことが示された。また、ポリプロピレンの沿面成長速度も分子量のべき乗則に従っていることが見いだされ、「べき乗則」が結晶化において普遍的である可能性が示された。これらのべき乗則を「核生成は高分子が融液中での絡み合いをとき、再配列する過程である」という高分子のトボロジー的本性を組み入れた我々のモデルによって説明できることを示した。 結晶化や融解の過程における(熱力学的量である)比熱と潜熱とを温度変調型の走査型の示差熱熱量計を用いて分離・評価する方法を提唱し、その有効性を数種の高分子について確認し、結晶化メカニズムの新たな角度からの研究に有効であることを示した。
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